こじれた恋のほどき方~肉食系上司の密かなる献身~
会話の中で父が最上さんのお父様のことや、仕事の話をしているうちになんとなく違和感があった。
ソニリアの社長の名前は最上健司。“最上”なんて苗字はそう珍しくないし、名刺をもらった時に、まさか……という思いがよぎったけれど、見事私の予感は当たってしまったのだ。
「ええ、そうなんです。でも、知らない社員もいるので内密にお願いしますね」
穏やかな口調で最上さんが苦笑いする。
はぁ、眩暈がしてきた。社長の息子だなんて……。
せっかくの料理もまったく食指が動かない。ひたひたに醤油に使った刺身を見つめていると。
「凛子さん? どうかしましたか? もしかしてどこか具合が悪いとか……」
眉尻をさげて最上さんが私の顔を心配げに見つめている。あの日の夜の彼の態度から、こんな顔もできるのかと感心してしまう。
凛子さん、だぁ? なによ、この狸!
今は紳士に振舞っているけれど、私はこの男の本性を知っている。
「すまないね、最上君。凛子は少し緊張しているみたいだ」
いつまでも浮かない顔をしている私を父が笑ってフォローする。ついに耐え切れなくなって、
「お手洗いに行ってくる」と理由づけると私は店の外に出た。
もう! なんなの、なんなの、なんなの!?
完全に嵌められた。
ふつふつと沸き起こる怒りを堪え、廊下を歩いているとその時。
「おい、待て」
ソニリアの社長の名前は最上健司。“最上”なんて苗字はそう珍しくないし、名刺をもらった時に、まさか……という思いがよぎったけれど、見事私の予感は当たってしまったのだ。
「ええ、そうなんです。でも、知らない社員もいるので内密にお願いしますね」
穏やかな口調で最上さんが苦笑いする。
はぁ、眩暈がしてきた。社長の息子だなんて……。
せっかくの料理もまったく食指が動かない。ひたひたに醤油に使った刺身を見つめていると。
「凛子さん? どうかしましたか? もしかしてどこか具合が悪いとか……」
眉尻をさげて最上さんが私の顔を心配げに見つめている。あの日の夜の彼の態度から、こんな顔もできるのかと感心してしまう。
凛子さん、だぁ? なによ、この狸!
今は紳士に振舞っているけれど、私はこの男の本性を知っている。
「すまないね、最上君。凛子は少し緊張しているみたいだ」
いつまでも浮かない顔をしている私を父が笑ってフォローする。ついに耐え切れなくなって、
「お手洗いに行ってくる」と理由づけると私は店の外に出た。
もう! なんなの、なんなの、なんなの!?
完全に嵌められた。
ふつふつと沸き起こる怒りを堪え、廊下を歩いているとその時。
「おい、待て」