こじれた恋のほどき方~肉食系上司の密かなる献身~
十月上旬にもなればそれなりに空気はカラッとして、ようやく秋の匂いを感じられる。最近まで夏の残暑を感じていたけれど、いつの間にかもうじめっとした湿気を感じなくなった。
ホテルから出てタクシーを待っていると、今日一日ずっと連絡の取れなかった父から折り返しの電話がかかってきた。
『凜子か? すまないな、留守電聞いたよ』
電話口の向こうの声は疲れ切っていて、一日中超多忙だったのだろう。そう思うと、いきなり先日の文句を言うのも憚れた。
「忙しかった? お父さん、あのね――」
『すまない。凜子……最上君から、その……会社の話は聞いたんだろう?』
なんて言おうか言葉を探していると、意外にも父の方から口火を切った。
「うん……聞いた。お父さんの会社が経営難だって、それ本当なの?」
まずは本人の口から事実を確かめたかった。いまだに信じ切っていない自分がいる。けれど、わずかな望みもむなしく、父は深くため息をついて言った。
ホテルから出てタクシーを待っていると、今日一日ずっと連絡の取れなかった父から折り返しの電話がかかってきた。
『凜子か? すまないな、留守電聞いたよ』
電話口の向こうの声は疲れ切っていて、一日中超多忙だったのだろう。そう思うと、いきなり先日の文句を言うのも憚れた。
「忙しかった? お父さん、あのね――」
『すまない。凜子……最上君から、その……会社の話は聞いたんだろう?』
なんて言おうか言葉を探していると、意外にも父の方から口火を切った。
「うん……聞いた。お父さんの会社が経営難だって、それ本当なの?」
まずは本人の口から事実を確かめたかった。いまだに信じ切っていない自分がいる。けれど、わずかな望みもむなしく、父は深くため息をついて言った。