こじれた恋のほどき方~肉食系上司の密かなる献身~
苛立つ気持ちを抑えながらシュエスコへたどり着いた。また最上さんがいたらどうしようかと思っていたけれど、それも杞憂に終わった。

店内にはお客さんが五人ほどいた。週末にしては少ないほうだ。私の特等席であるカウンターの一番奥の席には、幸い誰も座っていなかった。

「マスター、こんばんは。いつものください」

「いらっしゃいませ」

私はこの店で飲むとき、一番初めにチャイナブルーを注文する。マスターはそれをわかっていて、手際よくグラスにリキュールを注ぐ。

「お待たせしました」

「ありがとう」

グラスを手渡されるなり、私は喉が渇いていたこともあって一気にそれを飲んだ。先ほどの父との電話でむしゃくしゃしていたのもある。それを見ていたマスターが無言で驚いていた。いつもの飲み方と違うと思ったのだろう。それから私は赤ワインや、時にハイボールを飲んだりして、アルコールには強いほうだったけれどいい感じに酔い始めていた。その時。
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