こじれた恋のほどき方~肉食系上司の密かなる献身~
木崎課長の家族になにも感じていないと言えば嘘になるけれど、自分勝手な思いで彼を利用している背徳にも似た罪悪感に時々打ちのめされそうになる。この関係の引き金を引いたのは自分自身だと言うのに。

木崎課長はきまって私よりも先に部屋を出る。部屋に残されたこの瞬間だけが唯一、空しい、孤独だと感じてしまう。

信じるから裏切られる。愛するから振られてしまう。もう二度と、あんな辛い思いだけはしたくない。だから誰ももう好きになったりしない。どうしようもない心の闇の中で、いつまでも前に進めずに背を向けて、そんな自分を誤魔化すために私は木崎課長を利用している。

彼も家庭を一番大切にしているし、私とはただの戯れにすぎない。互いに本気にならないとわかっているから続けられる関係なのだ。一年以上も。

先ほどワインを一杯口にしたけれど、なんだか今夜は飲み足りない。シャワーを浴びてから早くここを出て、近くにある行きつけのBarへ行って飲み直すことにした。
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