こじれた恋のほどき方~肉食系上司の密かなる献身~
「おい、起きたか。この酔っ払い」

ドアがノックされてハッとなると、最上さんが部屋に入ってきた。それと同時に、卵やトーストが焼けるようないい匂いと、コーヒーの香ばしい香りが鼻と食欲をくすぐった。

今日は土曜日。

長い足にジーンズを履き、最上さんは黒のカッターシャツというラフな格好をしている。スーツ姿も様になるけど、意外にもシンプルな普段着は意外だった。

「二日酔いだろ? しじみの味噌汁作ってやったから、食欲があるなら来い」

確かに二日酔いで胃も荒れていると思う。それでも、食欲はあるのが不思議だった。夜通し着たままだった服を整えると、リビングへ出た。

「わぁ、すごい」

先ほどまで鬱々としていたのに思わず感嘆の言葉が自然と出てしまうほど、目の前に広がった窓越しの景色に目を奪われた。遠くにうっすら富士山が浮かび、いくつものビルの頭が見える。ここは相当な高層階なのだとうかがえた。見ると、テーブルにはトーストにスクランブルエッグ、そして焼き立てのソーセージなどが皿に載っていて、サラダまで準備されていた。久しぶりに見る朝食らしい朝食だ。

すごい、これ全部最上さんが作ったの? 料理とかするんだ……意外。
< 49 / 317 >

この作品をシェア

pagetop