こじれた恋のほどき方~肉食系上司の密かなる献身~
「今すぐに銀行に連絡しろ。通帳だけならまだしも銀行印もとなれば引き出される可能性が高くなる」

それを聞いた警察も「この方のおっしゃる通りです」と同意した。

とにかく落ち着かなきゃ。そう思ってもスマホを握る手は震えている。金融機関のコールセンターへ通帳の利用停止の連絡を入れると、私はその場でへなへなとへたり込んでしまった。


時刻は二十二時になろうとしていた。

これからどうしようかとまだ気が動転している。最上さんはアパート近くのコインパーキングに車を停めていて、私はとりあえず気持ちが落ち着くまで車の中で休ませてもらっていた。

「少しは落ち着いたか? ほら」

自動販売機でコーヒーを買ってきてくれた最上さんが車に戻ってくると、私に缶コーヒーを手渡した。すっかり指先まで血の気が引いて冷たくなった手のひらにホットコーヒーの熱がじんわりする。

「ありがとうございます……」
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