こじれた恋のほどき方~肉食系上司の密かなる献身~
空き巣に入られたことはもちろんショックだったけれど、貴重品が全部盗られてしまったのはダメージが大きかった。利用停止の電話をしたけれど、もし間に合わなかったら……と思うと、いてもたってもいられなくなる。
「こんなこと聞くのもなんだが……通帳にいくら入ってたんだ?」
いつもなら、なんて不躾な質問なの?とイラっとくるところだったけれど、私は素直に「三桁は……」と答えた。その貯金は自分のためではなかった。旅行好きな父がいつかリタイアした時に、定年祝いとして旅行をプレゼントしようと思って貯めていたものだった。そのために欲しいものも我慢して節約していたというのに。
情けない、惨めだ。あまりにも不用心だった自分が腹ただしい。
「泣きたきゃ泣いていいぞ、俺の前でなら許す」
「……泣いたりなんかしません」
泣いてもいい、と言われると歯を食いしばりたくなる。そんな私を「この意地っ張り女」といってそっと私の頭に触れた。言葉はぶっきらぼうだけどその手は優しくて、温かかった。そして最上さんはポケットから小さなメモ帳を取り出すと、さらっと何かを書いて私に手渡す。そこには彼のプライベートの連絡先が書かれていた。
「なにか困ったことがあったらそこに連絡してこい」
「やめてください……そんなことされたら」
「こんなこと聞くのもなんだが……通帳にいくら入ってたんだ?」
いつもなら、なんて不躾な質問なの?とイラっとくるところだったけれど、私は素直に「三桁は……」と答えた。その貯金は自分のためではなかった。旅行好きな父がいつかリタイアした時に、定年祝いとして旅行をプレゼントしようと思って貯めていたものだった。そのために欲しいものも我慢して節約していたというのに。
情けない、惨めだ。あまりにも不用心だった自分が腹ただしい。
「泣きたきゃ泣いていいぞ、俺の前でなら許す」
「……泣いたりなんかしません」
泣いてもいい、と言われると歯を食いしばりたくなる。そんな私を「この意地っ張り女」といってそっと私の頭に触れた。言葉はぶっきらぼうだけどその手は優しくて、温かかった。そして最上さんはポケットから小さなメモ帳を取り出すと、さらっと何かを書いて私に手渡す。そこには彼のプライベートの連絡先が書かれていた。
「なにか困ったことがあったらそこに連絡してこい」
「やめてください……そんなことされたら」