こじれた恋のほどき方~肉食系上司の密かなる献身~
もう我慢できない。緊張の限界から少しずつ解き放たれ、ホッとした時に優しくされたら、今まで我慢してきたことが台無しになる。心の中でそう抵抗したけれど、私は零れる涙を抑えることはできなかった。

とにかく気持ちを切り替えなきゃだめだ。いつまでもこうしていても最上さんに迷惑がかかる。
しばらくして、ハンドタオルで鼻を拭くと私は車を降りる準備をした。

「どこに行くんだ?」

「今日はもう帰ります。色々ありがとうございました」

ペコリと頭を下げると、呆れたような最上さんのため息が聞こえた。

「お前、今さっき空き巣に入られた部屋によく戻る気になれるな」

そんなこと言われたって、私にはアパートしか帰るところがない。空き巣に入られたなんて父に知れたら、ようやく独り暮らしを許してもらえたというのに、「すぐに帰ってきなさい!」と強引に連れ戻されてしまうだろう。それに心配もかけたくない。

「空き巣に入られたことを口実にするのは不本意だが、俺のマンションに来い」

「いえ、結構です」
< 73 / 317 >

この作品をシェア

pagetop