こじれた恋のほどき方~肉食系上司の密かなる献身~
「煙草吸うのか? ほら」

どうしてそう思ったのかわからないけれど、いきなり灰皿を目の前に出されて目が点になる。

「煙草は吸いません」

「なんだ、煙草の匂いがしたからそうなのかと思った」

一瞬、ドキッとする。ほかのお客さんが吸っているからだ、と言おうとして店内を見渡してみた。けれど、今煙草を吸っている人は誰もいない。

木崎課長の残り香だ……。

彼はチェーンスモーカーだからいつも気をつけているつもりだったのに、まさかこんなところで指摘されるなんて思わなかった。ホテルでシャワーを浴びたけれど、しっかり服に匂いが残ったままだったのだ。

「お前、男と寝てきただろ」

「えっ」

今度こそは声が出て驚いてしまった。咄嗟に顔をあげると「ここ」と首筋を指してニヤリとされる。先ほどの情事で木崎課長につけられてしまった首筋の痕、鏡を見た時に気がついていたけれど、言われなければわからない程度のものだ……と思っていたのに。
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