こじれた恋のほどき方~肉食系上司の密かなる献身~
「最上さんっ! こんなことして――」

「あーうるさい。わあわあ喚くなよ」

マンションのエントランスに言い争いのような声が響いて、コンシェルジュが目を丸くしている。「なんでもない」と彼がにこやかに軽く手をあげると、そのままエレベーターに乗り込んで部屋に着く。

「まずはシャワーを浴びてこい」

雨ですっかりずぶ濡れになり、身体も冷え切っていた。温かいシャワーを浴びたいのは山々だけどここまで来てしまった以上、彼に従うしかない。

「わかりました」

「素直でよろしい」

浴室は綺麗に掃除されていて、最上さんの趣向が窺えるような、おしゃれなディスペンサーボトルに詰め替えられたボディソープやシャンプーが並んでいる。

ああ。あったかい……。

頭からシャワーのお湯を浴びると、冷え切った身体に再び熱が蘇ってきた。

「タオルと着替え、ここに置いておくぞ」

「えっ、あ、はい!」

二枚折り戸の向こうから最上さんの声がしてハッとする。

どうして最上さん、ここまでしてくれるんだろう……婚約者だから?
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