こじれた恋のほどき方~肉食系上司の密かなる献身~
でも、私は婚約者なんて思ってない。だから優しくされると戸惑ってしまう。

シャワーを浴びて、最上さんが用意してくれたのは彼のスウェットだった。着てみるとなんともぶかぶかで思わず鏡の前で笑ってしまった。

よかった。私、まだ笑える。

色々悪運が続いたけれど、まだ心までは折れていないようだ。浴室から出ると案の定、最上さんは私の姿を見て噴き出した。

「笑わないでくださいよ。でも、ありがとうございました。後、お昼の差し入れも」

「どうせ節約しようとして昼抜きとか考えてるだろうと思ったからな。ほら、これでも飲め」

ソファに座って手渡されたのはカップに入ったホットワインだった。ひとくち飲むとシナモンの利いたフルーティな香りが鼻から抜ける。

「美味しい!」

こんな美味しいホットワインを飲んだのは初めてだ。すると最上さんは得意げに鼻を鳴らした。
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