こじれた恋のほどき方~肉食系上司の密かなる献身~
「お前以外のやつが携わった商品はなにかとトラブルがあったり、クレームも少なくない。特に木崎が仕切ったものはな。まぁ、あまり木崎のことを陰で悪くいうのは同じ男としてどうかと思うが……お前の上司はもうあいつじゃない。俺はお前の能力を買ったんだ」

私の能力を買った……? っていうことは、まさか。

「人事異動を仕向けたのは、最上さんだったんですね」

「ここだけの話、私情が入ってないとは言わない。俺はお前が欲しかった。ただの独占欲だ」

そんなことで異動させるなんて……なんて身勝手なの!

私は手にしていたカップをローテーブルに荒々しく置くと、最上さんをキッと睨んだ。けれど彼はそんな私をものともせずふっと笑った。

「気の強い女は嫌いじゃない。いざという時、自分で考える行動力があるからな。だからお前を気に入った」

すっと顎を捕られる。挑発的な視線に負けじと私はじっと顔を背けることなく睨む目を鋭くする。

「それに、友達は考えて選べ。木崎とのことをお前の同僚が大きな声で言いふらしていたのを前に社食で聞いたことがある。まったく、自分の婚約者に男がいると思ったらその相手が木崎だったなんて、お前趣味悪すぎだぞ」

うぅ、なんなのこの人!

ぐさりぐさりと胸に矢が突き刺さる。
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