Green Apple

運動会のプログラムも終わりに近づき、赤組団長の俺にとってはメインである、応援合戦の時間がやってきた。


俺は今、教室に忘れていたはかまを着ているところだ。


「お前腹筋やばいなー。」


副団長でクラス1、
いや6年生の中で1番足が速いが、ナルシストなところがあるナルシが、話しかけてきた。


「そうか?」

「女子が話してたぜ。腹筋早く見たいって。」

「お前のが見たいんじゃね?」

「かもなー。」


こういうところだ、って1つ結びの幼なじみが言ってたっけ。


「じゃ、俺着替えたし先にテント行くわ。なんなら整列するように言っておこうか?」

「あー、じゃあ頼むわ。」


ナルシはなんだが楽しそうに走って行った。


それにしても、前は開けているとはいえはかまは重い。

応援合戦の際、アクロバティックな動きをするから気をつけなければならない。


…山内、机に置いたお菓子は食べただろうか?

ふと思った。



山内が転校してきて半年と少し。

これまでに、
山内の心の中に、少しでも俺という存在だけが映ったことはあるのだろうか。

興味とか。


いや、
あるわけないか。ないよなぁ、きっと。



…よし、
たった8分。

たった8分の応援合戦の間だけだが、

この時ばかりは、山内の心にどうか俺だけが映りますように。
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