Green Apple
季節は過ぎて3月、そして卒業式前日。
本当に6年間はあっという間だった。
6年間があっという間なら、
中学や高校の3年間なんて一瞬なんだろうな。
今日は卒業式前ということで、授業はない。
午前中に、成人式の時に開けるタイムカプセルを埋め、午後に歌の練習をしたぐらいだ。
タイムカプセル。
これを再び開ける時、俺はどうなっているのだろうか。
全然想像がつかない。
そういえば、
結局山内とは転校初日に会話して以来、一言も喋ることはなかったな。
何をしてたんだ俺は。
でも本当に勇気がなかったのも、あの頃の思い出だ。
後悔がなかったといえば嘘になるが、そこまで後悔はない。
なぜなら、
同級生のほとんどが同じ中学校だから、例えクラスが違っても山内とは同じ空間にいることになる。
「中学生…か。」
この先どんな生活が待っているのだろうか。
部活、制服、恋人…
そんなことをボーッと考えていると、
「よぉ。」
ナルシが話しかけて来た。
「明日卒業式だってよ、実感わかねー。」
「俺は6年の時が1番あっという間だった。」
「いやいや普通は逆だろ。1年とか2年の時とかの方が記憶ねーし。」
「そうか?毎日はしゃいでいたからそっちの方が記憶ある。」
「まぁーお前はあれだもんな。」
「あれって?」
「山内かすみに夢中だったもんなぁ。」
「はぁ?なんでお前がそれ言うわけ?」
「お前わかりやすいけど?」
心底びっくりした。
こいつにも見透かされていたとは。
「マジかよ…。いや誰にも言うなよ!」
「わかってるって。中学に上がったら付き合えるといいな。」
ニヤニヤしながらいうこいつ、
ナルシこと秋野 勇(あきの ゆう)
こいつは大人になった今でも親友だ。感謝しているよ。