Green Apple
「1年は声出せ!」
「「「ファイトー!」」」
放課後、体育館。
先輩たちの練習を、端の方でドリブルの練習をしている俺ら1年生。
俺の他に勇、
そして背は高いがヒョロっとした体型のヒョロ、
1番背は低いものの、小1からバスケ経験のあるエース、
走り方が女々しいメメの5人がいる。
「1年、シュート練するからボール拾ってくれ」
「「「はい!」」」
俺たちは急いでリング下あたりに走っていった。
その途中、ジャージに着替えた山内がタイマーの付け方を教わっている。
1つ結びの位置がいつもより高めだ。
……めちゃくちゃ可愛い。
なんだかふわふわした気持ちになる。
少しだけ大人びた山内といま、同じ空間にいる。
俺たちはもう、小学生じゃない。
そうだ、中学生になったんだな。
なぜかこの瞬間に実感したような気がした。
「次スリーメンいくぞー、マネージャータイマーお願い。」
山内が教えてもらった通りにタイマーを設定し始め、『できた』と言わんばかりに少し笑顔になったのを俺はずっと見ていた。
「なぁ」
「わあ!びっくりした…。」
急に話しかけられたと思えば、少し不機嫌そうな勇が後ろにいた。
「なんだよ。」
「セト先輩ってかっこいいよなー。」
「あぁ、キャンプテン?」
セト先輩。
バスケ部の3年生でキャプテン。
確かに、
クールそうな顔つきの割には爽やか系だなぁ、という印象をもった先輩だ。
「噂なんだけど、セト先輩目当てで入った女子マネージャーの間で結構揉め事があったらしい。」
「揉め事?」
「まぁ、あれじゃねーの?カノジョになりたいとかそういう。」
「…の割にマネージャーは山内を入れて3人しかいないけど。」
「辞めたってことだろ。今じゃ各学年1人しか入れないとかなんとか。」
「……で山内が。」
「みたいだな。」
一体どういう基準で決めたのか、
そこは女の世界の問題だろうとしか思っていなかったが、
山内はなぜ男子バスケ部のマネージャーをやろうと思ったのだろうか。
なぜ、男子?
まさか好きなやつがいるとか?
そのことが思いつくと、すぐに落ち込むような気持ちになってくる。
(…いやいや余計な考えはしないっての。)
そう言い聞かせた。
スリーメンをしている2年、3年の先輩たちを見つめる山内を、ふと見つめる俺。
マネージャーとして、ってのもあるだろうけれど、
その視線は誰か追っているのだろうか?