真実(まこと)の愛
「……渡辺さん……ですよね?」
カフェのテーブルのようなデスクから、二十代半ばくらいの、明るい栗色の髪でミディアムボブの小柄な女が立ち上がった。
なかなか、かわいらしい顔立ちをしている。
「ああっ、やっぱ、素敵っ!
おウワサはかねがね人事にいる同期の小林から聞いていましたっ。
あ、あのっ、あたし、今度渡辺さんのチームでお世話になる岡本 紗英って言います。渡辺さんのチームでは販促を担当させていただきます。どうぞ、よろしくお願いしますっ!」
彼女はそう自己紹介して、がばっと頭を下げた。
「あら、そうなのね。
チームリーダーを仰せつかった渡辺 麻琴です。
今までステーショナリー一本で来たから、こちらのことは右も左もわからないの」
麻琴は彼女に向かって、大輪の花が綻ぶように笑った。
「それから、わたしのことは『麻琴』って呼んでちょうだい。向こうでもそう呼ばれていたから」
「ええっ、いいんですかっ⁉︎
……じゃあ、麻琴さん、あたしのことも名字じゃなく『紗英』って呼んでくださいっ!」
……こんな素直そうな子がメンバーでよかった。
ほんの少しだけ、守永に感謝した。
とりあえずは彼が選んだメンバーでやっていかなければならないからだ。
「紗英ちゃん、これからなにかと頼ることになると思うけど、こちらこそよろしくね」