真実(まこと)の愛
「とりあえず、前の奥さんを泣かせた不届き者の守永くんのことは置いといてさ。
……麻琴ちゃん自身は松波先生のこと、どう思ってるの?」
美咲さんからやんわりではあるが、まさに「核心」をずばり突かれる。
「えーっと……いい人だとは思うんだけど……」
お茶を濁すような言い方かもしれないが、これが麻琴の本心だった。
「ふうん……ということはさ、松波先生にどっか『引っかかる』とこがあるっていうことよね?」
稍がさらに、ずぶっと突いてくる。
「この歳だから、おつき合いするのなら、やっぱり『結婚』を視野に入れて、と思っているんだけど……やっぱり家庭環境が違い過ぎるっていうのが、ネックかしらね」
観念して、麻琴はつぶやく。
「あの『松波屋』の御曹司だもんねぇ」
稍には彼の「家業」を教えてあった。
「ええっ、そうなの⁉︎ あの老舗デパートの⁉︎」
美咲は目を丸くしている。
「松波先生は、家業を継ぐことはないから、大丈夫っておっしゃるんだけど……」