真実(まこと)の愛

「美咲さんの誕生石は?」

麻琴が尋ねると、

「アクアマリンなんだ」

美咲から返ってきた。

Aqua()」と「Marin()」を表すこの宝石は、古くから船乗りたちが航海する際に「お守り」として持って行ったものだという。
また、陸で待つ女たちも「無事で還ってきてほしい」と願いを込めて持っていたという。

「和哉はほとんど泳げないから、海はもちろんプールにも行くことないんだけどね。水自体が苦手みたいで、すっごい烏の行水だしね」

美咲はこともなげに魚住部長の「唯一のコンプレックス」を暴露した。

「「えええぇーーっ⁉︎」」

麻琴と稍が一斉に叫んだ。


毎年六月に社長命令によって開かれる社内対抗バレーボール大会では、今年もステーショナリー部門のMD課が優勝した。

その立役者となった魚住と青山の息のぴったり合ったコンビネーションは、今では社内で伝説化している。(青山が部署を移ったため、来年からはもう見られないからだ)

セッター青山が上げた正確無比なトスを、アタッカー魚住は相手コートへ自由自在に打ち込んだ。
一八〇センチの長身の上にジャンプ力もあるものだから、相手チームのブロックのさらに上から、叩きつけるようなスパイクを炸裂させていた。

女子社員たちの黄色い声援が、有明スポーツセンターの体育館中に響いて、耳が痛いくらいだった。

……どう見ても、魚住さん、運動神経よかったよね?

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