真実(まこと)の愛

(ふすま)の向こうには、GAPのパーカーに迷彩柄のジョガーパンツ姿の長身の男が立っていた。
前髪を無造作に下ろしていて、年齢は二十代後半であろうか。

……あら、部屋を間違えたのかしら?

麻琴が声をかけようとすると。

「日本酒が揃ってる店やって聞いとったからな。
もうそろそろ、おまえも美咲さんも、ぶっ壊れてえらいことになってる頃やろ?
……迎えに来たったぞ」

その落ち着いた低い声には聞き覚えがあった。

「あ……智くんっ!」

稍が彼のもとへ駆け寄った。

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