真実(まこと)の愛

「智くんっ、やや、失恋した気分やねんっ!」

稍は青山に抱きついて嘆いた。

「なんや、どうした?おれはおまえをフッた覚えはあらへんぞ」

会社では鉄仮面で鉄面皮の青山が、(とろ)けそうな笑みを浮かべて、稍の頭をよしよし、と撫でる。

……ちょっと、いったいなんなの⁉︎
その緩みきったデレ顔はっ⁉︎
ドン引きなんですけれどもっ⁉︎

「智くんと(ちゃ)うよっ、守永課長やんかっ!」

稍が青山の腕の中で叫んだ。

「なんやとっ⁉︎
おまえ……守永さんと浮気しとったんかっ⁉︎」

一瞬にして、青山が大魔神か仁王様のような険しさ百パーセントの顔になる。

……なんだか、ややこしいことになりそうね。

麻琴は週明けの守永に心を馳せて憂えた。

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