真実(まこと)の愛

「あ、そうだ、渡辺」

青山が相変わらず稍を抱き寄せたまま、麻琴に話しかける。

「松波先生から、うちの情報システム部にストレスチェックの質問シートのフォーマットを依頼された。個人情報や集計結果を人事部の持つデータと連携させるっていうのは、君のアイディアらしいな?」

「そんなご大層なアイディアじゃないですよ」

麻琴は肩を(すく)めた。そもそもIT関連は苦手で門外漢だ。

情シス(うち)では稍が担当することになった」

やっぱりね、と麻琴は思った。

「稍にとっては実質『初仕事』になる。
おれもできるかぎりフォローするつもりだが、なにか思い悩むようなことが出てきたら、悪いが君も助けてやってくれ」

……本当に、ややちゃんには甘いわねぇ。

そうは思いながらも、麻琴はくすっと笑わずにはいられない。

「大丈夫ですよ。もちろん、ややちゃんのために尽力しますけど、松波先生もいますしね」

とたんに、青山の眉間にシワが寄る。

……イヤだ。青山さんったら、松波先生にまで嫉妬してるの?

麻琴は(こら)えきれず、声をあげて笑った。


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