真実(まこと)の愛

「えっ、ちょっと……今夜は……」

今日は松波の出勤日であった。
あの日以来、彼とは退社後に数回、食事に行っていた。

今、時刻は定時を少し過ぎたところだ。
彼がすでに、いつもの待ち合わせのカフェに向かっているかもしれない。

麻琴はスマホを取り出して、LINEのトークを開く。

「……あれ……?」

松波に急用が入ったそうで、今夜の食事をキャンセルしてほしいとメッセージが入っていた。

「おい、早くしろ。行くぜ」

守永がトゥミのブリーフケースを持って立ち上がった。

つられて麻琴もバルパライソを引き寄せ、帰り支度をする羽目になった。

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