真実(まこと)の愛
Chapter5
➖❶
麻琴はますます仕事に精を出すようになった。
……それでなくても、昇進したばかりだもの。
もっともっと、仕事に集中しなくちゃ。
MD課のデスクにいる今も、クロッキーブックに思い浮かんだアイディアをスケッチしている。
「……麻琴さん、それ、額縁ですか?」
紗英が後ろから覗き込んで訊いてきた。
「えぇ、そうよ」
麻琴は顔を上げずに答える。
クロッキーブックには、いくつものフレームのデッサンが描かれていた。
「いかにも『北欧風』な、シンプルだけどオシャレなデザインですよねー。ステキ!」
そんな紗英の賛辞にもかかわらず、麻琴は顔を顰める。
「ありがと……だけど、こういうのはすでにイケアで売ってるからねぇ」
先日、上林から指摘されたのはもっともなことで、どうせ手に入れるなら「本場」のものがいいに決まっている。
「でも、『本場のもの』ってデカいんですよー。
狭い部屋にそういうの一つ飾ると、存在感がハンパないんですよねぇ。そこだけ『浮いちゃう』っていうか……やっぱ、海外の広ーいお部屋仕様なんですねぇ」