真実(まこと)の愛

「じゃあ、そういう新進気鋭のクリエイターたちに、癒しを感じられるデザインの中にも実はいろんな問題提起を孕んでいるというような作品をつくってもらってみてはどうでしょう?
それから、環境保護以外にもいろんなNPOがありますから、クリエイターとそういう団体とのコラボっていう企画もおもしろそうですね」

上林が次々に提案する。商品企画は彼の「本業」だ。

「ただオシャレな絵と枠を売るだけじゃ、MD課の意味がないと思いませんか?どうせハナっから大量生産して売りまくらなければいけないなんてことは考えなくていいんだから、徹底的に『限定』販売にしてプレミアム感を出しましょうよ」

「……そうだな。麻琴、ゆくゆくはそのクリエイターの初期の『幻の作品』って言われるようなのをつくろうぜ」

守永がニヤリ、と笑う。

「肉筆ではなくて複製ですからね。そこまでは……」

肩を(すく)めながらも、麻琴の顔にも笑みが(こぼ)れた。

「あたし、この企画の段階の時点で、すでにこの商品ほしいですっ!」

紗英が拳を握って断言した。

< 139 / 296 >

この作品をシェア

pagetop