真実(まこと)の愛

「……あれ、麻琴さん。ピンキーリング、どうしちゃったんですか?」

今まで涙ぐんでいたはずの紗英が、もうけろっとして麻琴の右手を見ていた。

「あのオパールのフォークリング、すっごくお似合いだったのにぃー!」

麻琴の眉間に、知らず識らずのうちにシワが刻み込まれる。

ピンキーリングは未だ、リビングにある造り付けシステム収納の引き出しの中だ。
早く松波に会社で突っ返したいのに、取り出してもいなかった。

あのリング自体……見たくないのだ。

なんだか居たたまれなくなって、つい目線を上げると、守永の視線にぶつかった。

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