真実(まこと)の愛

「松波先生、お話はよくわかりました」

……結局、あなたもそうだったってことよね?

再会したかつて好きだった(ひと)に、あっという間にかっ攫われてしまうというパターンは、麻琴にとって「地雷」以外の何物でもない。
魚住や青山のときに味わった苦くてくるしい想いが、沈めたはずの胸の奥底から甦ってくる。

今度は松波によって、真っ正面から踏まれたうえに、こっばみじんこに粉砕されてしまった。
そして、その地雷によって吹っ飛ばされたのは、踏んだ松波ではなく麻琴だった。

にもかかわらず、麻琴は自分の中のプライドを根こそぎひっ掻き集めて笑顔をつくった。

「本当に、わたしのことは気になさらなくて結構ですよ」

……どうぞ、お二人なかよく、永久(とこしえ)に、お幸せに。

その笑みは、CMで活躍する女優たちよりも、パリコレのランウェイを歩くモデルたちよりも、華やかで美しかった。

「えっ、ちょっと、待って……」

その輝きをまともに喰らってしまった松波が、少しあわてた様子で言い淀む。

「仕事が立て込んでますので、失礼します。
……残業もできませんしね」

華やかな笑顔を貼りつけたままピリッと皮肉も盛り込みながら、麻琴はさっさと医務室をあとにしようとした。貴重な業務時間を費やして、こんなプライベートな話をしているヒマはないのだ。

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