真実(まこと)の愛

その瞬間、魚住のときのことが、麻琴の脳裏にフラッシュバックした。

魚住が結婚した相手も、小学校のときの同級生で「幼なじみ」だったからだ。

……また、あんなつらい思いをするくらいなら。

しかも、魚住とはついぞなかったカラダの関係が、青山とはあった。二年も、だ。

普段のクールさとは人が変わったように激しくなる、あのベッドでの彼を「はい、そうですか」と手放すわけにはいかない。

青山がかつて、手当たり次第に遊んでいた種類の男だということは、なんとなく気づいていた。

決して肉欲に溺れることなく、目の前のオンナが悦ぶ「ツボ」を冷静に見極め、あとはただひたすらそこを攻め立てて陥落させる彼のセックスは、まるでゲームを攻略しているかのようだった。
一朝一夕に身につく巧みさではなかった。

麻琴とて、青山と出会う前はいろいろあったからわかるのだ。魚住に失恋した直後のことだ。

そんなある意味「似た者同士」の自分たちは、かなり「相性」が良かったと思う。
それを証拠に、麻琴とこういう関係になった彼がもうほかでは遊ばなくなったようなのだ。

だからこそ……「期待」していた。

なのに、ほかのオンナに取って代わられるなんて。


……それも、その(ひと)を「妻」にするだなんて。

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