真実(まこと)の愛

中高時代から男友達は何人もいたが、彼らは常に麻琴を「高嶺のお姫さま」と崇め奉っていた。
だから、麻琴が男の人と本格的につき合ったのは美大に入ってからだ。

ある日学生食堂で、同じ学年ではあるがグラフィックデザイン専攻の芝田が、プロダクトデザイン専攻の麻琴に声をかけてきた。

恵まれた容姿と在学中から周囲より頭一つ抜き出た才能で、彼は目立つ存在だったから麻琴も名前と顔くらいは知っていた。

そんな芝田に突然話しかけられたのにはびっくりしたが、芸術に関する専門知識が半端なく豊富でおもしろそうな(ひと)だと思った麻琴は、誘われるまま彼と二人っきりで呑みに行くことにした。

そして、呑みに行ったその夜、(都内に実家があるにもかかわらず)一人暮らししていた芝田の部屋に「お持ち帰り」された。
当時から酒で潰れたことのない麻琴だったから、半ば合意の上での同意だ。

中高時代からモテまくっていた芝田は、すでに経験豊富だったため、麻琴はとてもやさしく大事にしてもらいながら処女を「卒業」することができた。

麻琴の処女をもらった芝田は、終わったあとものすごく感激していた。(どうやら麻琴が未経験であるとは夢にも思っていなかったらしい)

『生半可な気持ちで抱いたわけじゃない。
ラブホに連れ込むんじゃなくて、うちに連れ帰ったのも麻琴が初めてだ。
……きみとちゃんとつき合いたい』

そう言われて、麻琴は彼に「同類」と思われていたことに多少は憤慨しながらも、憎からず思っていたのは確かだったので承諾した。

< 161 / 296 >

この作品をシェア

pagetop