真実(まこと)の愛

「……そうなんだ」

松波が心の底からホッとしたように笑った。

「じゃあ、そんな麻琴の思いを叶えてあげられるのは、まだ妻のいない僕しかいないよね?」

……でも、あなたには、いつヨリが戻ってもおかしくない美しい元カノがいるじゃないの?

麻琴は俯いた。知らず識らず、くちびるを噛んでいた。どうにもならないときの、彼女の幼い頃からのクセだ。

「麻琴……?」

松波が麻琴の顔を覗き込む。

「それでも……僕ではダメなのかな?」

今までは松波の異次元の家柄が「理由」だった。
だけど、今は……


……あなたの、あの美しい(ひと)の存在が、どうしても頭から離れない。

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