真実(まこと)の愛

……や、『やだ』⁉︎

思わぬ言葉に麻琴は顔を上げた。
空耳かと思った。

とても来年四十歳になる男性から、しかも社会的地位のある医者という立場の者から発された言葉とは思えない。
噛み締めていたくちびるが、自然と開く。

「この前の上司も、先刻(さっき)の学生時代からの『くされ縁』も、きみを『麻琴』って呼んでたよね?
なぜ……僕だけが呼んじゃいけないの?」

松波はものすごく気分を害した顔で抗議する。
しかし、くるしそうに顔を歪めたさまは、ややもすると痛々しいほど哀しそうに見えなくもない。

「……わかったよ」

松波は意を決した。

「だったら、僕はきみのことを……」

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