真実(まこと)の愛

プライベートはおろか、オフィスでも互いに元の部署から異動となった今、もう青山の姿は滅多に見られなくなった。

奇しくも麻琴自身が、今までは彼の意思決定に沿って「商品のデザインだけを担当していればいい」という立場から、チーム全体を見渡して管理する、これまで青山が担っていた立場に変わった。

これからは、ロハスライフの自分のチームで商品開発に掛かる費用を、彼女が上の管理職からもぎ取って来なくてはいけない。
そのためには、上の者を納得させることのできる「強力な企画力」が不可欠だ。

そうでなくてもMD課は、今までにない斬新な商品をつくるための部署である。
今回新たに発足したチームは五チームだと聞いている。もう「競争」は始まっているだろう。

「……上林くん、初めまして。
チームリーダーの渡辺 麻琴です。
わたしの専門はプロダクトデザインだから、うちのチームが軌道に乗るかどうかは、あなたの『企画力』にかかっているの。期待してるわよ」

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