真実(まこと)の愛

「まずは手始めに、会社で大声で呼んでみよう。
社食あたりがいいかな?きみのことを、でっかい声で『マコッティ〜!』って呼びかけたら、みんなびっくりするだろうなぁー」

松波は、さもすばらしい思いつきのように、うっとりと微笑んでいる。

……なんなの、その嫌がらせ⁉︎
まるで、小学生男子じゃないのっ⁉︎

「ま、まさか……冗談ですよね?」

麻琴は恐る恐る尋ねる。

「冗談じゃないよ?『マコッティ』」

弧を描く口元とは裏腹に、窓から差し込む陽光を浴びて輝く緑灰色の目は、まったく笑っていなかった。

……やーめーてええぇーーーっ‼︎

社食でウワサのターゲットにされる光景が……特に、人事の小林 仁美が中心となって騒いでる様子が……いとも容易(たやす)く麻琴の脳裏に浮かんだ。

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