真実(まこと)の愛
芝田に妻子がいることも理由の一つだ。
だから、人妻だった美咲を離婚させてまで結婚に至った魚住のヴァイタリティには、スタンディングオベーションしたいくらいだ。
また別に既婚者でなくとも、かつて好きだった人への愛を復活させてさらに持続させるというのは、新しい人と初々しく恋愛を始める以上に厄介で、めんどくさいことがてんこ盛りだと思う。
だから、小学生の頃の初恋の相手だった稍と、再会するなりたった一ヶ月ほどで結婚へと踏み切った青山にもスタンディングオベーションだ。
いずれにせよ麻琴には、一度「別れ」を経験していることで、一緒にいてもまた同じことの繰り返しになるのではないか、という懸念が心のどこかに魚の骨みたいにずっと引っかかっていて、いつまでも取れないような気がしてならないのだ。
だが……そんなことよりも。
そもそも麻琴の芝田に対する思いが、つき合っていたあの頃から「友情」以上のものではなかったからかもしれない。
麻琴にとって、ちゃんとおつき合いした唯一の彼氏であったというのに。
そして、それを今日、数年ぶりに芝田と再会してみて、麻琴はまざまざと思い知ったのだった。