真実(まこと)の愛
「えっ……課長、転勤するんですかっ?」
……この十月に、MD課に異動したばかりなのに?
「あぁ、そうだ。だが、ここだけの話だぞ?
正式な辞令はまだなんだ。だから、絶対に他言無用にしてくれよ?」
麻琴はこくこくっ、と上下に首を振った。
「本当は先日の大規模な人事異動の際に、大阪支社に営業部長として赴任するはずだったんだけどな。ロハスに新設するMD課が軌道に乗るまで、半年でいいから課長として行ってくれ、って言われてさ……でも、それって『半年で軌道に乗せろ』ってことだよな?」
守永は片方の口角を上げて苦笑した。
……守永さんが、半年後、大阪に行っちゃう?
ということは、彼の元妻で麻琴の友人でもある瑞季とまた、一緒の支社で働くことになるのだ。
……あの状態から、せっかく立ち直ったっていうのに。
動揺して蒼ざめる瑞季の顔が脳裏に浮かび、思わず麻琴の眉間にぐーっとシワが寄る。
しかし、次の瞬間、そんな感傷的な思いは見事に吹っ飛んだ。