真実(まこと)の愛
「青山のチームで……あ、今は部長か……大量生産しないMD課にもかかわらず、ヒット商品を飛ばしまくったのは、麻琴の女子受けする洗練されたデザイン力の賜物でもあるんだ。営業先で、OLが『オシャレでかわいい〜♡』って文具で悶えてる姿を目の当たりにしたおれが言うんだから間違いないぜ」
「そ、そうですか?」
さすがの麻琴も、ついはにかんでしまう。
……瑞季を泣かしたサイテーなヤツだけど。
昔から相手が一番喜ぶツボを、確実に、しかもさりげなく、突いてくるのよねぇ。
営業成績が良いのがよくわかった。
要するに「人誑し」なのだ。
それも彼自身は特に意識することのない「天然」ときている。
「それに、きみは立場の違う人の話でもしっかり聞けて、自分たちのプランにきちっと反映させられるしな。それはまだお互い二十代の頃勤務していた大阪支社のときから感じていた。
そして、数年ぶりに会ったきみには人脈もあり、人材をつなぐ調整力も備わっていた。
ますます、デザイナーとして『個の力』を発揮するだけでは惜しいと思ったんだ」
そして、守永が麻琴の瞳をじっと見つめる。
「きっと麻琴なら、集団のそれぞれの力を引き出しながら引っ張っていける……いいリーダーになれると思うんだよ」