真実(まこと)の愛

「もし、一緒に大阪に来てくれるのなら『管理職』としてのやるべきことを、おれがイチから叩き込んでやる。そのためにはもちろん、しかるべき役職が必要だろう。上に言って、きみのために課長職を用意させる準備もしている」

……えええぇっ⁉︎
ついこの前、課長代理にあたるチームリーダーになったばかりなのに⁉︎

「ちょ、ちょっと……突然すぎて……」

麻琴がしどろもどろになっていると、

「そうだよな……大阪に行くとなると、製品のデザインはできなくなるもんな」

……そうなのだ。

麻琴が新卒で入社した頃は、まだ東日本を統括する東京本社と西日本を統括する大阪支社にそれぞれ商品開発部門があった。

ところが、会社の規模がどんどん拡大していった結果、手狭になった本社を今のテレコムセンターに移転することになった。
そして、それまで煩雑だった中枢機能を一気に新本社に集中させることが決定した。

それに伴い、デザインを含めた商品開発に関する部門はすべて新本社に移転された。
そのとき、魚住と麻琴が東京へと転勤になったのだ。

だから、今大阪支社に異動となると、麻琴に待っている「管理職での仕事」は、新人研修以来の「営業職」になるに違いない。

それこそ、守永の「専門」だ。

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