真実(まこと)の愛
「それに……だれの精子でもいいってわけじゃないのよねぇ。
ねぇ、あなた、優秀な男だったら、精子バンクからでも大丈夫な派?」
「だ、大丈夫じゃないですよっ!」
……そんな派なんて、あっても入りたくないわっ!
「結婚したからって、夫婦がいつまでもなかよくやっていけるとは限らないとは思っていますが、やっぱり子どもは『愛しあった』結果として生まれてきてほしいです」
「……わたしもそう思うんだけどもね」
礼子はふーっと息を吐く。
「わたしのアメリカ人の友人で、『このまま愛する男との出会いなんか待ってたら、母親になれる時期をとっくに通り過ぎちゃうわ』って言って、四十歳のときに精子バンクで『調達』して人工授精で子どもを産んじゃった人がいるのよ」
礼子はワイングラスをくるくる…とスワリングする。
「バリバリのワーキングウーマンで、経済的にはシングルマザーでも全然大丈夫そうで、本人は『産んでよかった』ってすっごく充実してるから、幸せなんだとは思うんだけど。
……でも、そうやって生まれてきた子どもはどう思うのかしらね?
まぁ、まだ幼稚園だからねぇ。思春期くらいになると、どうなっちゃうのかしら?」