真実(まこと)の愛
「……すでに息子が二人もいるのに、私はこんなにも体たらくな『父親』なんだ。
だから、とても礼子に『私の子どもを産んでほしい』とは言えないよ。
会社の後継者だって、なにも血縁者にではなく優秀な部下に任せようと思っているしね。きっとその方が会社のためになるはずだ」
鮫島はゆっくりと説くように礼子に語りかける。
「それに、出産は命がけだということだけは、じゅうぶん知っている。高齢出産になる礼子に万が一のことがあれば、大袈裟じゃなく、私はこの先一人で生きていける自信がないんだ。
子どもがいなくても私は生きていけるが、礼子がいなくなっては私は生きていけないんだよ」
礼子は俯いて、彼の言葉をじーっと聞いていた。
「それに、私は礼子が思うほど『大人』じゃないんだ。こんな歳になっても、きみに対する独占欲がすごくってね。
Jubileeのアイコンとして、きみが会社のために貢献してくれるのはありがたいけれど、世間の男たちの目に触れる今のような仕事なんかすっぱり辞めさせて、私だけのためにどこにも出さず閉じ込めておきたいという願望もあるんだよ?
だから、決して仕事のためにきみといるっていうわけではないんだ」
……まぁ、ちょっとヤンデレ入ってなくもないけれども。
実際に鮫島に会ってみると、礼子が彼からこの上なく愛されていることだけは確かだ、と麻琴には判った。