真実(まこと)の愛
「君、おもしろい表現するね。
私は、礼子みたいにツンデレな味がするパスティスが大好きなんだけどね」
鮫島が声をあげて笑った。
「それに……正直だ」
彼の周囲には、顔色を伺ってばかりの輩が数多くいた。
「ところで、初めてお会いすると思うんだけど。
……礼子とはどういうつながりなの?」
そういえば、麻琴は自己紹介をしていなかった。
鮫島が有名人すぎて、自己紹介してもらう必要がなかったからうっかりしていた。
「あぁ……この人は、恭介の彼女よ。
恭介が産業医を勤めるステーショナリーネットでプロダクトデザイナーをされている、渡辺 麻琴さんっておっしゃるの」
礼子は一片の迷いもない口調で、鮫島に「紹介」した。
「へぇ……そうなんだ……松波医師の……」
鮫島が改めて麻琴をじーっと見る。
恭介とは面識があるらしい。
……えええぇっ⁉︎
「ち、ち、ち、違いますっ!」
麻琴はすぐさま全否定した。
「えっ、違うの?」
礼子がきょとんとした顔になる。
「でも……恭介はあなたのことが好きよ」
そして、麻琴の右手の小指に目を遣る。