真実(まこと)の愛

「それでね、この前ぽっかり予定が空いた日に、恭介にその『お礼』をさせようと思って、二人でこの店に来たの。恭介は『今夜は予定がある』って渋ってたんだけど、無理矢理引っ張って来ちゃったのよ」

……そして、カウンターにいたわたしと守永さんに鉢合わせしちゃった、ってわけね。

「礼子が松波先生に対して、もう旧友以上の感情はないのは知ってるし、彼からも『礼子をよろしく』されちゃったから、心配するようなことはなにもないと思うけれど、それでも二人っきりで会うのはいただけないなぁ」

鮫島が魅惑的な流し目で礼子に微笑みかける。
だが、その目は決して笑っていない。

「ねぇ、麻琴さん……君もそう思わない?」

……えっ?

「松波先生が、今でも元カノの礼子と二人っきりで会ってるのは、おもしろくないよね?」


……確かに、おもしろくはなかったけれど。

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