真実(まこと)の愛

恭介が、初めて二人で迎える誕生日を祝う食事のお店に選んだのは、意外にも閑静な住宅街の中にある昔ながらの「洋食屋さん」だった。

カウベルの音とともに年季の入った木のドアを開けると、

「……まぁ、恭介くん、いらっしゃい」

自分たちの母親世代の女性が出迎えてくれた。

「この店のマダムだよ」

恭介が麻琴に告げる。

そして、マダムに向かって「渡辺 麻琴さんです」とだけ紹介する。麻琴はマダムに会釈をした。

「渡辺さん、お越しくださってありがとうございます……恭介くん、どうぞ二階に上がってちょうだい」

マダムから促されて、恭介は麻琴を連れて二階へ上がった。

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