真実(まこと)の愛

二階はパーティスペースの大部屋とワンテーブルだけの小部屋とに分かれていて、恭介は小部屋の方の扉を開けた。
そして、中央にあるテーブルに着く。

「ここは先代の頃から家族で通っている店でね、特に祖父母が気に入っていたんだ。
僕も妹も、よちよち歩きの頃から来ているんだよ。この個室だと、ほかのお客さんの迷惑になりにくいからね」

先刻(さっき)の恭介とマダムの話しぶりで、恭介の家族とこの店の関係がなんとなくわかった。

「せっかくの誕生日だから、もしかしてフレンチとかイタリアンのコースなんか期待してた?」

恭介が「だったら、ごめん」という口ぶりで、麻琴の様子を伺う。

「全然、大丈夫よ。むしろ、楽しみです。
だって、こういう家族代々からの常連さんたちに愛されてるお店って絶対に美味(おい)しいでしょ?」

麻琴はそう言って、テーブルの上に置かれていたメニューを手にとる。

「ねぇ……このタンシチュー、ものすごく美味しそうなんだけど」

メニューの写真を見ながら、恭介に指し示す。

「おっ、目敏(めざと)いね。この店の名物だよ」

恭介は心底うれしそうに笑った。

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