真実(まこと)の愛

「あ、あの……恭介さん」

そんなことを考えている間、表面上はしばらくスリープモードになっていた麻琴が、ようやく口を開いた。

「わたしたち……おつき合いしてませんよね?
なのに、いきなり『結婚』だなんて……」

そうなのだ。麻琴と恭介は恋人同士ではない。

「あれっ、そうだっけ?」

未だ中世の騎士のように片膝をつく恭介は(しかも、彼の風貌だとやたらと似合っている)、麻琴を見上げたまま、首をこてん、と(かし)げた。


……いやいやいや。
ちゃんと「現実」を受け止めてっ!
わたしたち、未だかつて、つき合ったことなんてありませんからっ⁉︎

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