真実(まこと)の愛

「この人がわたしを呼び捨てにするのは、音の響きが男みたいな名前だからよ」

麻琴の見目麗しい顔が、ぶすっとした顔になる。
「まこと」という名前のために、男に間違えられたのは数限りない。

「それから、この人がバツイチだってことは知ってるわよね?」

紗英が「えええぇっ⁉︎」という顔になる。

……あら、知らなかったの?それは好都合ね。

「わたしはこの人が別れた奥さんと同期で、わたしたち大阪支社で一緒に働いていたのよ。
もちろん結婚式にも呼ばれたわ。あのときは、あーんなに幸せそうだったのにね。
彼女は今も大阪に住んでいるんだけれども、時々連絡を取り合ってる仲なの」

守永は左手で前髪をくしゃっと掻き上げながら「まいったな」と苦笑いしている。
その薬指には、シンプルなプラチナの指輪が見えた。


……ふうん、「今度」は破綻せずにうまくいってるようね?

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