真実(まこと)の愛
゜゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*:.。. .。.:*・゜゚


シャワーを浴びたあと、とてつもなく広いリビングのふっかふかのソファに座っていた麻琴は、アクアパンナをひとくち、口に含んだ。

その昔、フランス王妃も輩出したイタリアの大商人・メディチ家が保有していた領地から湧き出すミネラルウォーターで、今はサンペレグリノが権利を持ち販売している。軟硬水なので、炭酸(ガス)がなくても飲みやすい。

……結局のところ、どんな家庭環境であっても、
当人次第なのよねぇ。

先刻(さっき)までいたエントランスで、恭介に要請されて麻琴の指紋認証に関する事務処理をテキパキとこなしていた典士(のりあき)を思い出して、つくづく思った。

「……Nature(自然は) is a good(優れた) mother(母親だ).」
〈親はなくとも子は育つ〉

麻琴は、ぽつり、とつぶやいた。

……父親が身近にいない分、母親ががんばった、ということなんでしょうけれど。

するとそのとき、背後からふわり、と抱きしめられた。

「まさか……ほかの男のことを考えてるんじゃないだろうね、麻琴?」

麻琴が借りたあとにシャワーを浴びて、リビングにやってきた恭介だった。


「先刻さ、なんだか典士(テンシ)のこと、じーっと見つめてなかった?」

< 282 / 296 >

この作品をシェア

pagetop