真実(まこと)の愛

「……Excuse me?」
〈……なんですって?〉

思わず麻琴は聞き返した。

恭介はいつも上品な BBC English(英国の標準語)なのに、米語(スラング)だったからだ。しかも、かなりきわどい意味も忍ばせた言葉である。

「Sorry……”pumped(膨らませて)”は女性の前では品がなかったね。普通に” Can’t(カーント) wait any more.”〈もう待てないよ〉って言えばよかった」

恭介はそう言って麻琴の肩にまた顔を(うず)めた。
年甲斐もなくガッつきかけたことを反省しているらしい。

だけど、たとえ米語(スラング)であったとしても、発音だけは相変わらず聞き取りやすくて上品だった。
イギリスでRPと呼ばれるReceived(容認) Pronunciation(発音)である。

「I was wondering if you might care for my bedroom?」
〈きみは僕の寝室(ベッドルーム)に関心はないのかな?〉

すると一転して、まるで職場(ビジネス)で使いそうな言葉遣いになった。

……もちろん”my bedroom”以外の言葉だけどね。

「How come?」
〈どうしたの?〉

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