真実(まこと)の愛

八王子にある美術大学を卒業し入社して以来、三十三歳になる今まで、ずっと携わってきたステーショナリー部門の製品(プロダクト)デザインがもうできなくなるのは、正直言ってさびしい。

だけど、異動することが決まった先は、文具よりももっと幅広いデザインが手掛けられる生活雑貨部門だ。

生産デザイン学科でプロダクトデザインを専攻した美大時代に学んだものが、今までよりもずっと発揮できそうな気がする。

麻琴が勤務する(株)ステーショナリーネットは、社長の葛城がまだ学生時代に立ち上げ、ここ数年で急成長を遂げたネット通販会社である。
今年で創立して二十年経ったが、創業者の社長はようやく四十代に入ったばかりだ。

もともとはオフィス用品に特化したネット通販を展開していたのだが、今では販路拡大を目指して一般家庭もターゲットに含めた生活用品部門も始めていた。

それが麻琴の異動先の「ロハスライフ」である。

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