真実(まこと)の愛
「あ、部長、お昼休憩に行ってきます」
稍がそう言うと、
「はぁ?なに言ってるんだ、稍。
無事昇進もしたことだし、昼は祝いがてらおまえと外に出て、ちょっと贅沢なランチを食べようと思ってたのに。わざわざ、石井に隠れ家的フレンチの店を聞いていたんだぞ」
青山部長が普段の鉄仮面をこっぱみじんこに砕いて、驚愕の表情になる。
「智くん、歓送迎会は週末だし、着任した今日くらいは早く帰ってくるんでしょ?
だったら、晩ごはんはうちでご馳走つくって待ってるからさ。お昼くらい麻琴ちゃんと食べさせてよ」
稍はこともなげに言う。
「さっ、麻琴ちゃん、早く社食へ行こっ!
日替わりの限定ランチが、なくなっちゃう」
「そうね。早く行かなくっちゃ。
……じゃあ、青山部長、失礼します」
麻琴は青山部長から、ぶっ殺されそうなほど
凄まじい顔で睨まれた。
だが、麻琴はそれには目もくれず、心の中で
ひひひ…と忍び笑いをする。
……いい気味だわ。
ランチのややちゃんは、わたしのものよ。