真実(まこと)の愛
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「もぉ、ちょっと麻琴ちゃん聞いてよー」

日替わり限定ランチの油淋鶏(ユーリンチー)を箸で持ち上げた稍が(うめ)く。

社員食堂であるにもかかわらず、まるでおしゃれなカフェにあるようなテーブルのカウンター席で、麻琴と稍は二人並んで座っていた。

大きな窓に面した席だ。
窓の向こうには天高く晴れた秋空の下、きらきらと輝く海が広がっている。対岸の都心へ渡る首都高速台場線にはレインボーブリッジが見えた。

「あたしは情報システム部ではまだまだ『戦力』にならないから、せめて『ヘルプデスク』でもやって、超多忙な部内のみなさんのお役に立てればと思って、智くんに言ってみたの。
そしたら、すっごくムッとした顔で
『稍はそんなことをしなくてもいい』
って部長の執務室に引っ張って行くのよ?」

「ヘルプデスク」というのは、社内でなにかIT関連のトラブルが起こったときに(大抵の場合、データにアクセスできないだとか、パスワードを間違え過ぎてロックされたとか、些細なことだが)その部署に駆けつけて対応するという、かなりめんどくさい仕事だ。

先日ITパスポートを取得した稍は、そのくらいなら「お手の物」だと思って申し出たのだ。


……それはきっと、青山さんがややちゃんを「外」へ出したくないからでしょうよ?

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