真実(まこと)の愛

青山と稍は、小学校のとき近所に住んでいた同級生の幼なじみだったが、互いに引っ越して以来、離れ離れになっていた。

ところが半年ほど前、稍が青山のチームに事務サポートとして派遣され、彼らは再会したのだ。

そして、その一ヶ月後には、もう入籍していた。

稍は結婚を機に、派遣社員から直接雇用の「嘱託社員」となった。さらに、青山の情報システム部への異動とともに、彼女も同じ部署へ移った。

すべて、青山が計画したことだ。

セフレだった麻琴に対しては、シベリアの永久凍土のように溶解することのない血も涙もない対応を見せた彼が……

惚れまくった妻の稍に対しては、南太平洋の島々の赤道直下の湿度過多な暑苦しさで執着しまくっている。どうやら、会社であろうとずーっと(そば)に置いて、片時も離れたくないらしい。

そんな姿を、昨日まで所属していたチームで、イヤってほど見せつけられた麻琴は……


……ヤツも所詮、惚れたオンナに対しては「フツーのオトコ」だったってことよねぇ。
おかげで、百年の恋も、すーっかり冷めて、今や「無」の境地よ。

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